昨年から年明けにかけて、読み終わった本
がけっこう溜まった。
読書感想文も停滞気味なので、ここで再開することにする。
再開1本目の作品は、これ。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆
【物語アウトライン】
ロシアからは法も秩序も消えていた。
当局の権威は失墜し、幾多のマフィア組織が無軌道に鎬を削っていた。
そしてチャーリーに未来はなかった。
さらに、未来のない男に与えられたはずの任務は、思わぬ危険な方向へと彼を導いてゆく。
米露両大国の思惑に揉まれ、屈折した愛情に揺さぶられながら、彼は因縁浅からぬ街で孤独な活動を展開する。
ターゲットは、原子爆弾数十発に相当するとされる、消えた240キロ超のプルトニウム。
それはロシア国内に残されているのか、はたまた移送されてしまったのか?
チャーリーの調査が進展する一方で、罪なき娘サーシャの身に危険が迫る。
目には目を、命には命を。
自らの簡潔な哲学に基づき、チャーリーは鉄壁の罠を用意した。
銃弾の嵐の向こうで微笑むのは誰か。
世界を危機に陥れた計画に行方は・・・。
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【この物語における鍵】
チャーリー、かつての恋人ナターリヤがいるロシアへ赴任する。
共産主義が倒れ、民主主義となったロシアに対する、各国情報部の変容。
マフィア組織が跋扈し、公務員の人手不足と癒着に悩まされるロシアの現実。
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初登場作品「消されかけた男」以降、魅了され続けるキャラクター。
それが本作の主人公、チャーリー・マフィンである。
イギリスの情報部員である彼は、風采の上がらない中年の窓際族である。
普段はくたびれた背広を着て、変形した足に合う不恰好なハッシュパピーの靴をはき、
いつも足の痛みに悩まされている。
しかしながら、彼は本当の意味において「プロ」の情報部員である。
彼の特筆すべき点は、自らの簡潔な哲学に忠実であること。
すなわち、
目には目を、命には命を
ということ。
そのために彼は、自分を陥れようとした英米両国の情報部長をソ連に逮捕させて逃亡者となり、復讐のために妻を殺した両国情報部員を爆殺し、ソ連に捕まった後はKGBの教官となり、イギリス情報部に捕まった後はソ連との二重スパイを演じる。
「生き残る」という本能が鋭敏で、イギリス情報部に復帰後も、中国情報部に人身御供にされそうになると、逆にイギリス情報部長をスキャンダルで抹殺してしまう。
風采の上がらぬ彼がヒーローたる所以は、自己の哲学に忠実であるために、任務も愛する人も、すべて犠牲にできるストイックさと、用意周到に罠を張り、相手を徹底的にやっつけるところじゃなかろうか。
久しぶりに読んだ感想は、素直に「かっこいい」と思えた。
探偵ではないからハードボイルドとは呼べないが、ストイックさと哀愁という、男が心の中で求めてやまない部分がしっかり含まれている。
事件のスリルも、現在のロシアが抱える悩みを描いており、決して絵空事とは思えない。
この作品以降、チャーリーはロシアのイギリス大使館内にある小さな部屋で任務をこなすことになる。
幸い、新しい情報部長はチャーリーが信頼できる人物のようなので、人身御供にされることはないだろうが、困難な任務をバンバン振ってくるだろう。
作者は、旧ソ連時代には入国が許されなかった。
その禁が解かれて現地取材が可能になった結果がこの作品である。
以降、他のシリーズも含めてロシアを舞台にした作品を発表し続けている。
なお、チャーリー・マフィンを知りたい方は、ぜひとも「消されかけた男」から読んで欲しい。
味わい深さが変わることを保証する。
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